イミダが持久力(スタミナ)に及ぼす影響を調査しました。
健康な成人男性6名に、イミダゾールジペプチド1.5g/日を1週間摂取させ、摂取期間の前後で漸増負荷ぺダリングテストにおける疲労困憊までの時間(※1)とVO2Peak (※2)を測定しました。また、別の健康な成人男性5名には、イミダを含まない擬似食品(※3)を摂取させ、同様の試験を行いました。
その結果、イミダを摂取した群では、摂取前に比べて疲労困憊までの時間が延長していました。また、被験者のVO2 Peakも増加していることも確認いたしました。 VO2 Peakは、被験者の有酸素能力の指標であり、値が大きいほどマラソンなど持久力を要する運動に有効であることを意味します。一方で、プラセボを摂取した群では、同様の効果は認めらませんでした。
疲労困憊
までの時間
VO2 Peak
*p < 0.05 vs 摂取前 (値は平均値±標準誤差)
イミダの摂取により、持久力(スタミナ)が向上することがわかりました
環太平洋大学との共同研究
河口ら, ランニング学研究 30(1): 157-159, 2019
ニッポンハム中央研究所では、鶏肉から抽出したイミダを使って、これまでに国の研究機関 (※1)や大学(※2,3)と連携し、たくさんの研究を行って参りました。
作用メカニズムの解明(国立スポーツ科学センター※1)
アスリートの運動能力測定(筑波大学※2)
中高齢者の疲労・運動能力測定
(埼玉県立大学※3)
11人の健康な男性を対象に、筋肉中のイミダ(カルノシン)量と運動パフォーマンスの関係を調べました。体重の7.5%の負荷をかけたエルゴメーター(※1)により、30秒間の全力ペダリングにおけるパワーを測定しました。また、被験者の太ももの筋肉(外側広筋)に含まれるイミダ(カルノシン)濃度を測定しました。その結果、筋肉中のイミダ(カルノシン)濃度が高いヒトほど、高いパワーを示していました。
30秒間全力ペダリング
カルノシン(m mol/kg wet muscle)
筋肉中のイミダ(カルノシン)濃度が高いヒトほど、
高いパフォーマンスを示していました
Suzuki et al., Jpn. J. Physiol. 52: 199-205, 2002
※1:エルゴメーター:負荷をかけて、運動者の体力測定やトレーニングを行う器具。
イミダが筋肉中に多いと、なぜ運動パフォーマンスが向上するのでしょうか。ニッポンハムは国立スポーツ科学センター(※1)と共同で、そのメカニズムを調べました。 12名の健康な男性を被験者に、イミダ4gを含んだ食品もしくはイミダを含まない擬似食品(※2)を30日間摂取させました。摂取期間の前後に、 MRS(※3)という機械を使い、運動をしながら筋肉のpH(※4)を測定しました。
MRSによる測定
測定模式図
その結果、イミダを摂取した群では、擬似食品を摂取した群に比べ、疲労困憊になるまでの時間が長くなっていることがわかりました。
また、通常、運動により筋肉中に乳酸がたまると、酸の作用により、筋肉のpHは下がっていきますが(グラフ○)、イミダを摂取した被験者では、筋肉のpH低下が抑えられている例も確認されました(グラフ●)。
イミダを摂取していた場合、筋肉のpHが下がりにくいことが
確認されました
筋肉のpH低下は、筋収縮を妨げるので、結果として運動が継続できなくなります。しかし、イミダはpH低下を抑える作用があるため、その結果、運動を継続できる(パフォーマンスが向上する)のではないかと考えられました。
国立スポーツ科学センターとの共同研究
Maemura et al., 11th ECSS, 2006
イミダを食品として摂取した時の運動パフォーマンスについて調べました。
健康な男性8名にイミダ1.5gを含んだ食品を摂取させ、30分後に体重の7.5%の負荷をかけたエルゴメーター(※1)により、5秒間の全力ペダリングを10セット行いました。また、同じ被験者に対し、日にちを変えて、イミダを含まない擬似食品でも同様の試験を行いました。
パフォーマンステスト
(5秒全力ペダリング+25秒休息×10セット)
その結果、イミダを含まない擬似食品を摂取させた時には、セットを重ねるごとにパワーが落ちて行きましたが(グラフ●)、イミダを摂取させた時は、このパワーの低下が抑えられていました(グラフ●)。つまり、イミダを食品として摂取すると、運動パフォーマンスが向上することが確認されました。
イミダを摂取していると、特に後半の運動において、
高いパワーを発揮できることがわかりました
筑波大学との共同研究
鈴木ら, 体育学研究 49: 159-169, 2004
イミダを食品として摂取した時の筋肉中の変化を調べました。
健康な男性8名にイミダ含有食品を30日間摂取させ、摂取前後において、被験者の太ももの筋肉(外側広筋)に含まれるイミダ(カルノシン)濃度を測定しました。また、体重の7.5%の負荷をかけたエルゴメーター(※1)により、 30秒間の全力ペダリングにおけるパワーを測定しました。
パフォーマンステスト
(30秒間 全力ペダリング)
その結果、イミダを30日間摂取した後には、筋肉中にイミダが蓄積していることがわかりました。また、運動テストの結果、筋肉中のイミダ(カルノシン)が増えたヒトほど、パワーが増加していることがわかりました。(もともと筋肉中にイミダが少ないヒトにおいて、顕著な結果が見られました。)
つまり、食品としてイミダを摂取すると、筋肉中にイミダが蓄積し、パフォーマンスが向上することが確認されました。
イミダの摂取により、筋肉中にイミダ(カルノシン)が蓄積し、それに比例したパフォーマンスの向上が認められました
筑波大学との共同研究
佐藤ら, 体力科学 52: 255-264, 2003
筋肉痛への影響について、研究を行いました。
健康な成人男性10名に、200回のスクワット運動をさせた後、イミダ2gを含んだ食品を4日間摂取させました。スクワット運動の前、1日後、2日後、3日後、4日後に、科学的なアンケート手法VAS(※1)を用いて、主観的な筋肉痛の度合いを評価をしました。また、同じ被験者に対し、日にちを変えて、イミダを含まない擬似食品でも同様の試験を行いました。
スクワット運動
その結果、イミダを摂取した時には、疑似食品を摂取した時に比べて、痛みの程度が低くなっていることが確認されました。
イミダ摂取によって、筋肉痛が緩和されていました
環太平洋大学との共同研究
前村ら, 環太平洋大学研究紀要 1: 83-87, 2008
ニッポンハムがパートナーカンパニーを務めるJリーグ セレッソ大阪のプロサッカー選手を対象に、トップアスリートに対しても、イミダの効果を検証しました。
セレッソ大阪に所属する選手13名を被験者とし、イミダ860mgを含んだ食品もしくはイミダを含まない擬似食品(※1)を14日間摂取させました。摂取期間の前後に、体重の7.5%の負荷をかけたエルゴメーター(※2)により、5秒間の全力ペダリングを10セット行い、パワーを測定しました。
その結果、擬似食品を摂取した群では変化はありませんでしたが、イミダを摂取した群では、パワーの増加が見られ、運動パフォーマンスが向上していることが確認されました。
トップアスリートでも、イミダによる運動パフォーマンスの向上が
確認されています
鈴木ら, トレーニング科学研究会 , 2002
ヒトの筋肉中のイミダ(カルノシン)濃度は、加齢と共に減っていくことがわかっています(年齢との関係)。そこで、中高齢者を対象に、イミダを摂取させた時の効果を調べました。
健康な中高齢男女20名に、イミダ225mgを含んだ食品もしくはイミダを含まない擬似食品(※1)を4週間摂取させました。摂取期間の前後に、筋力とバランス能力のテストを行いました。
その結果、イミダを摂取した群では、ひざの筋力、バランス能力が摂取前に比べて向上していることがわかりました。一方、擬似食品を摂取していた群では、変化はありませんでした。
イミダは、中高齢者の疲労の軽減にも役立つことがわかりました
埼玉県立大学との共同研究
佐藤ら, 日本食品科学工学会誌 59(4): 182-185, 2012